きすはぐ
ノイグラード王国の中心地であるノヴァリスタ城は国の長である女王の居住地であり、政治の中軸でもある由緒ある場所だ。聖戦時には女王自ら民を発起させるなど重要な局面で幾度となく使用されてきた。が、長く続いた聖戦が終わってからその主は城の品格を疑わせるようなことをしているという。
――今日もそんな格式の高い城に、朝が来た。
***
「ノクスー!!」
早朝から仕事に向かっていたノクスだったが、忘れ物をしていたことに気づき、取りに戻ろうと廊下を引き返していると、向こうからハニーブロンドを揺らしてこちらにだんだんと近づいてくる姿を見つけた。
よく見るとまだネグリジェのままのようだし、そもそも女の子がスカートの裾を乱して走っていいのか、という疑問が浮かんだが心の中に留め、笑顔で姉に答える。
「姉さん。こんな朝早くにどうしたの?」
「あのね、ノクス……」
荒い息を整えながら上目づかいに大きな水色の瞳で見られ、ノクスはどきっとした。
「ぎゅーっ!」
「ね、姉さん!?」
突然首に手を回して、ぴたりとくっついてきた姉にノクスは驚いて唖然とする。しかし、やがて自分も腕をその腰に回す。幸せそうに笑う姉の様子が目に見えるようでノクスも思わず笑みがこぼれた。
「朝から何かと思えば、姉さんは甘えんぼだね」
「あら、こんなことするのはノクスにだけよ」
「知ってる」
ノクスは愛おしさを伝えたくて腰に回している手に少し力をこめた。互いの臍が服越しにくっついてるような密着感にマタンは体の力が抜けそうになり首に回した手に力を込める。
「姉さん、大丈夫?」
「ええ、平気よ」
力が込められたことを感じて気遣う様子を見せるノクスにマタンは事もなげに返す。
「それよりもね、ノクス……」
マタンの吐息が首筋にかかる感覚に、自分の呼吸まで荒くなりそうになる。
「なに、姉さん?」
ノクスは姉が何を言おうとしているのかだいたいの予想はついていた。わかっていながらもそう問いかける自分は少しいじわるだ。
「キスして」
予想通りの言葉にノクスはマタンの髪に手を潜り込ませると一気に唇をあてがった。
うっとりとした表情を浮かべ目を閉じるマタンに、ノクスはどうしようもないくらいの愛おしさがこみ上げてくる。触れるだけのキスでも、唇を通して伝わってくるぬくもりで幸せを感じられた。
***
しかし、唇を離すやいなやマタンはぷいと薄桃色の頬を膨らませた。
「あのね……前から思っていたのだけど……」
「ノクスは頼まないとキスをしてくれないのかしら?」
「そんなことないよ」
「でもよく考えると私からばっかりしている気がするわ……」
「そうかもしれないけど……」
それを聞いたマタンはため息をついてくるりと後ろを向いた。
「……私、まだ着替えていないし部屋に戻るわ。お仕事がんばってね、ノクス!」
そう言った声は明るかったが、声とは裏腹にしょんぼりと部屋に戻っていくマタンを見て、ノクスは心の中でため息をついた。
「……姉さん」
悄然としている背中がゆっくりとこちらにふり返る。
――ちゅっ
「!?」
突然背後に現れたノクスに唇を押し当てられたマタンは驚いて目を見張る。ノクスはそんなマタンをよそに十分に唇を味わってからゆっくりと顔を離した。
「いつも僕からキスできないのは、姉さんが先にしてくるからだよ」
「そうなの……?」
ノクスは深く頷くと、マタンの両肩に手を回す。
「姉さん」
「キス、する?」
マタンは大輪の花のような笑顔を浮かべて、頷いた。
*****
あとがき
ばか!もう自分恥ずかしすぎる!!
でも、こんなことをブログに書いた後だったので絶対に笑顔の二人を書いてやろうと思ってもしゃもしゃやりだしたのです。どろ甘ですねもうすごく><
でもこれくらいらぶらぶしてていいと思うんです。ノクマタは正義!超きゅんきゅんです!
そして「ぎゅー」は神レベルに好きな単語です。ハグはもちろん手とか頬をくっつけたり……こんなに密接してる温かさを感じられる言葉って少ないと思うんですよ。
あと「ちゅっちゅ」もすごい好き!変態くさくてすみません;
それから、「ぎゅ」がテーマだったのに、いつの間にか「ちゅ」に変わっちゃって焦りましたw
まあらぶらぶなら良しということでw
えっとタイトルですが、花男Fの挿入歌とはまったく関係ありませんよ;
はぐしてちゅっちゅしてるからこんなタイトルにしたのです。
本文とはまったく関係ないですが、agonyはすばらしくノクマタですね><
あれを聞いてるとシリアスが書きたくなります;
KOTOKO曲でノクマタ妄想するのに最近ハマってて、やばいですw
次のSSはノクス変態ネタいっちゃうかもしれません;
(09/05/11)