おみぱに!
プロローグ
「おみあい?」
彫刻のように整った顔を歪めて少女は素っ頓狂な声をあげた。
正午を少し過ぎた昼下がり。
庭に出されたこじゃれた木のテーブルにはスコーンとティーカップ、そして読みかけの本。
白いパラソルが作る影に置かれた椅子には細部まで精巧に作られた人形のような顔をした少女が座していた。彼女の名はマタン・カトルセ、世界中に支社を持っている業界でも相当名の通った会社を代々築き上げてきた一族の一人娘だ。
「はい」
と、返事をしたのは彼女の側近中の側近であるファロだ。
しかし、
「いやよ」
即座に返ってきた答えに今度はファロが幽かに眉をひそめた。
「今回は嫌でも行っていただくことになります」
「どうして?」
「今日の16時に、とのことですので」
「まあ…」
それでもしばらくの間、ぷい、と頬を膨らませて抗議の意を示していたが、やがてテーブルの上に置かれた茶色のアルバムに手を伸ばし、ゆっくりをそれを開いた。
「ふぅん」
そこにいたのは目を少し細めて涼しげな笑顔を作っている男だった。マリンスポーツでもやっているのか肌は健康的な小麦色で、白い歯がやけに目立つ。どこかの大きな企業のご子息様なのだろう。
「このお方ならマタン様に劣らないと父上がおっしゃっていましたよ」
ということは仕事上、父からは断れない相手らしい。
「とにかく会えばいいのよね、会えば」
「…ええ、まあ」
ファロは言葉を濁したが、まさにその通りなのだ。
流れるようなハニーブロンド、抜けるように白い肌、人形のように整った美しい目鼻立ち……。清らかであり、男性が見て魅かれずにはいられない容姿をしているマタンは、パーティなどで見て以来彼女を忘れられない男たちからお見合いの申込という名のアプローチを毎日のようにかけられている。基本的には父親が写真を突き返しているのだが、まれにこのように『仕事上』の付き合いのため自分から断れない相手がいる。そのような相手は実際に会ってマタン自身が断れば問題は無い。が、庭を回ったり、形式ばった話をするのが面倒くさくてマタンはこれまで相手に会わずにお見合いを回避しようとわざと予定を入れたりするなど裏工作を幾度もしていた。
「一応言っておきますが、逃げないでくださいね」
「今日はもう逃げ場はないわ」
観念したように呟くと冷めた紅茶をぐぐっと一気に口に含んだ。
「さて、そろそろお支度を」
「ええ」
その声を合図にどこからともなくメイドが現れるとマタンはその後について屋敷の中に消えた。
*****
あとがき
とりあえず、プロローグをアップしてみました!
このおみあいパロは3年前くらいから温めていた話しです。違うCPで書こうと思っていたのですが、結局書かずじまいだったので今回こそは!ということでノクマタに使うことにしました。
もうひとつ理由があるのですが、それはまたおって。
実は私MAYA画集を持っていないので、ノクマタの細かい公式設定がわかってない状況です;
5/30の再販で絶対買いますけど!!!もう待ちきれません><!
まだまだはじまったばかりなので、長い目で見ていただけるとうれしいです!
(09/04/30)